当ユニットでは、基礎物理分野のオープンサイエンスの推進のため、理研が産出する多種多様な基礎物理学および関連分野の研究データの集積と、データの2次利用の研究開発を行います。理研の基礎物理学が関連する研究センター連携の下で、基礎物理分野の効果的・効率的なデータ共有・情報処理基盤を構築します。
ユニット概要
研究主分野
情報学
研究関連分野
研究キーワード
ユニットリーダーインタビュー
埋もれたデータに光を
~物理学のフロンティアを支える次世代インフラの構築~
「二度と取れないデータ」を未来へ継承する
原子核、素粒子、宇宙といった基礎物理学の進展には、巨大加速器や観測衛星などの大規模実験装置が不可欠です。伝統的に実験物理学には「自ら道具を作る」文化が根付いていますが、莫大なコストと時間を投じて得られた実験データのうち、興味のあるわずか数%の物理事象に絞って論文発表されることも多々あります。残りの大部分のデータにも貴重な事象が含まれていますが、実験条件などの情報が系統立てて保管されておらず、活用できずに放置されてしまっているものが少なくありません。
しかし、物理的・経済的制約により同一条件での再実験が困難な現代において、これらのデータは極めて貴重な資産です。当ユニット(基礎物理系データ共有開発ユニット)は、この未活用のデータを、再利用可能な形で共有・継承するための構造的変革を担っています。
研究現場と情報基盤をつなぐ新たなスキーム
私たちのミッションは、単なる解析ソフトウェアの開発ではありません。研究現場と情報プラットフォームを機能的につなぐ、新たなスキームとメソッドを確立することです。これまでデータ共有が進まなかった最大の要因は、研究室のリソース不足と、共有活動に対する評価体系の欠如にありました。
そこで私たちは、情報統合本部(R-IH)と連携し、データ共有やオープンサイエンスへの貢献を従来の論文執筆と同等に評価するKPI(重要業績評価指標)を導入するなど、研究者のキャリアパスにおける実利を確保するインセンティブの再定義を行っています。また、提供するデータについても、実験当時の解析環境を完全再現できるパッケージや、専門外の研究者が即座に計算に利用できる高次データなど、実利的なレベル定義を進めています。
要する重複演算を回避し、理論研究全体の効率を劇的に向上させることも目指しています。
3分野からのスタート、そして国際展開へ
現在、当ユニットでは「素粒子」「原子核」「宇宙」の3分野を重点対象としています。これらは歴史的に交流が深く、共通の言語や背景を持つため、データ共有モデルを先行構築する上で強力なパートナーとなります。まずはこの親和性の高い分野で成功モデルを確立し、将来的には理研全体の標準へと波及させていく戦略です。
私たちの目指すオープンサイエンスは、欧州で見られるような官僚的な義務化ではありません。素粒子・原子核・宇宙核物理学が培ってきた「実利的なオープン性」の伝統を継承し、以下の3要素を統合したサステナブルな仕組みを構築します。
- (1) プラットフォーム:個別の研究費に依存しない永続的なデータ保存基盤の確保
- (2) 人の評価:データ管理を担う人材を専門家として正当に評価する
- (3) 組織化:特定の個人に依存せず、組織としてデータを管理し続ける体制の構築
最終的なゴールは、データ共有がメールやWi-Fiのように「あって当たり前」のインフラとして定着することです。将来的には当ユニットという組織形態が解消されたとしても、その機能が理研の標準プロセスとして溶け込んでいる状態を目指しています。 また、IAEA(国際原子力機関)へのデータ供給や、自前の巨大実験装置を持たない新興国への高品質なデータ提供を通じて、国際的な専門家ネットワークの構築にも貢献していきます。
求める人物像:サイエンスの合理性を追求する「建設者」
当ユニットは、物理学のフロンティアを「情報の再構築」という側面から支え、次世代の研究環境をデザインする場所です。 私たちは、素粒子・原子核・宇宙物理学、またはその周辺領域における博士号レベルの専門知識を持ち、かつデータ処理やIT技術(プログラミング、データ構造など)を道具として自在に操れる方を求めています。
ここで求められるのは、自身の個別の研究テーマに没頭することだけではなく、サイエンス全体の発展のために共同で仕組みを作ることに喜びを見出せる姿勢です。自律的にプロジェクトを推進できるマネジメント能力、そして他分野の研究者や情報系の専門家と円滑に連携できるコミュニケーション能力も必要となります。
ユニットはまだ始まったばかりで手探りの状態です。既存の枠組みに捉われず、サイエンスの合理性を追求し、未来の研究インフラを共に作り上げてくれる同志の参画を期待しています。
馬場 秀忠(Ph.D.)
ユニットリーダー
専門は原子核実験および物理学実験のための情報処理。立教大学理学研究科物理学修了、博士(理学)。国立研究開発法人理化学研究所仁科センター研究員などを経て、2024 年より現職。(仁科加速器科学研究センター 情報処理技術チーム チームリーダと兼務)
メンバー
| 役職 | 氏名 |
|---|---|
| ユニットリーダー | 馬場 秀忠 |
| 上級研究員 | 青木 保道 |
| 専任研究員 | 土井 琢身 |
| 専任研究員 | 三原 建弘 |
| 研究員 | 久保田 悠樹 |
| リサーチアソシエイト | 武重 祥子 |