理研の情報基盤構築・運営を推進する情報統合本部に所属するユニットとして、情報ネットワークを利活用する研究の支援を行います。情報システムを利用する研究者の活動の最大化に向け、ネットワークの効率的な利用に加え、システム・アプリケーションの最適化をサポートします。さらに、最先端の研究を支える情報基盤の構築運用で得られる知見を活かし、インターネットプロトコルの性能向上や新しいプロトコルの研究開発を行うとともに、成果の社会実装を目指します。
ユニット概要
研究主分野
情報学
研究関連分野
研究キーワード
ユニットリーダーインタビュー
研究インフラを「空気」にする
~「研究活動以外の『労力』」を最小化する環境構築と、ボトムアップ型の課題解決~
「不満がない」ことの危うさと、インフラの透明化
研究機関におけるネットワークとは、研究者にとって空気や電気と同じように、「あって当たり前」の存在でなければなりません。私は一度理研を離れ、戻ってくることになった際に、当時の本部長(美濃導彦先生:現理化学研究所情報統合本部ガーディアンロボットプロジェクトプロジェクトディレクター)から理研のネットワーク基盤に対する懸念としてユーザからの不満・要望が上がってこないことを挙げられました。すなわち、基幹ネットワークに世界最高水準の学術情報ネットワーク(SINET)を利用しているため品質が良いという見方もできましたが、「不満がない」のではなく、「ユーザが諦めて声を上げていないだけ」ではないかという疑念があるということです。着任後最初に取り組んだのは、ネットワーク品質を可視化し、潜在的な問題がないかを継続的な監視を通じて実証することでした。
私たちのユニットの究極の使命は、研究者が着任したその日から活動を開始し、離任時には残務に追われることのない情報ネットワーク環境を整えることです。今日の多くの研究プロジェクトでは限られた期間、リソースで成果を出さなければなりません。現実には、研究立ち上げに伴う情報システム整備、ユーザ管理などシステム運用多大な時間・労力を割くことになります。また、退出時には研究データ管理への対応や、機微なデータの確実な処理も同様です。私たちは、こうした「研究活動以外の労力」を可能な限り減らしつつ、情報システム基盤を空気のような存在にすることを目指しています。
現場の「困りごと」を拾い上げ、システムで解決する
当ユニットは、物理的なインフラを管理する情報システム部門、すなわち日々のユーザの「困りごと」を個別に解決していく、とは異なり、ユーザである研究者の「困りごと」を拾い上げ、システムとしてその解決を目指す「基盤研究開発」の立ち位置にあります。
現在注力しているものとして、ユーザ管理コストを抑えつつ研究室で導入の容易な認証・認可基盤の実現があります。理研では事務部門が管理する高い品質の人事情報に基づく認証基盤が提供されていますが、それらは各研究室が運用する情報システムでの認可に必要な所属組織などの属性や、認証方式の違いから活用されておらず、結果として、人事情報とシステムのユーザ管理は分断されています。私たちは認証システムと研究室の情報システムの認証・認可ギャップを埋め、LDAP, RADIUS といった旧来の認証方式を連携させる方式を開発しています。これによって、研究者は着任と同時に研究室の情報システムに登録され、利用開始できる仕組みを目指しています。 また、サーバなどのストレージのライフサイクル管理に関わるもの(とくに廃棄時)も課題と認識しています。具体的には、ラップトップ PC、スマホ、クラウドでは暗号化消去、すなわちストレージ全体をあらかじめ暗号化し、廃棄時には鍵を廃棄する方式が一般的ですが、物理サーバのストレージでは統制上の問題もあり、廃棄にあたっては物理破壊が求められています。n我々は研究者のパフォーマンスを最大化すべくこれらの課題に取り組んでいます。
異なる技術言語をつなぐ「通訳」の役割
国立研究開発法人である理研では他にはない巨大なリソースと最先端の研究を行っている多様なユーザを抱えており、基盤研究開発部門の強みはそれらユーザの声を直接聞ける立ち位置にあることです。
理研には多様なバックグラウンドを持つ研究者が集まっていますが、専門性の違いがシステムの連携を阻む壁になることも少なくありません。当ユニットには、こうした異なる技術背景を持つ研究者の間に立ち、互いの要件を翻訳して最適な着地点を見出す、高度な「技術的通訳」としての役割も期待されています。単にネットワークを構築、運用するだけでなく、異なる専門知をシステムとして統合していく調整力こそが、理研のインフラを強くするのです。
求める人物像:課題を発見し、システムとして解決する「探求者」
当ユニットで最も重視するのは、与えられた課題を解く能力以上に、日常の運用やユーザの声から「自ら問題を発見できる資質」です。
現場に落ちている「小さな困りごと(課題)」を拾い集め、それを一般化してシステムとして構築していく、ボトムアップ型のアプローチに喜びを感じる方を歓迎します。 私たちは、ネットワークやインフラに精通した人材の獲得競争は激しいことを理解しています。だからこそ、キャリアの第一線で技術を磨いてこられたシニア層の方や、自身の研究テーマの追求よりも、大規模なシステムの安定運用と改善そのものに知的な喜びを感じる研究者の方を歓迎します。 最先端の科学研究の現場で、その足元を支える情報インフラをシステムとして維持する。そうした実務的な貢献を正当に評価し、必要とする環境がここにはあります。
小林 克志(Ph.D.)
ユニットリーダー
専門は情報通信、情報ネットワーク、インターネット。電気通信大学大学院電気通信学研究科電子物性工学修了、博士(工学)。東京大学大学院情報理工学系研究科特任准教授などを経て、2024年より現職。
主要論文
- J. Bai, J. He, Y. Chen, Y. Shen and X. Jiang: "RL-Assisted Power Allocation for Covert Communication in Distributed NOMA Networks" IEEE Systems Journal, 1504-1515 (18) June 2024.
- J. Bai, J. He, Y. Chen, Y. Shen and X. Jiang: "Covert Communication Performance with Outdated CSI in Wireless Greedy Relay Systems" IEEE Trans. Inf. Forensics Security, 2920-2935 (17) January 2022.
- Katsushi Kobayashi: "A DRAM-friendly priority queue Internet packet scheduler implementation and its effects on TCP" IFIP Networking 2020 Conference and Workshops, Networking 2020, 713-718, June 2020.
- Kiyohide Nakauchi, Katsushi Kobayashi: "An explicit router feedback framework for high bandwidth-delay product networks" COMPUTER NETWORKS 51(7), 1833-1846, May 2007.
- Shu Zhang, Katsushi Kobayashi: "Rtanaly: A System to Detect and Measure IGP Routing Changes" Information and Media Technologies (IPSJ), p. 1146-1154 (2006).
- Katsushi Kobayashi: "Flexible arrays of inexpensive network (FAIN): toward global parallelism in the internet to satisfy future traffic growth" Proceedings of 2008 ACM CoNEXT Conference, CoNEXT 08.
- Shu Zhang, Katsushi Kobayashi: "HOTS: An OWAMP-Compliant Hardware Packet Timestamper" 358-361, March 2005.
- Katsushi Kobayashi: "Design and Implementation of a Firewire Device Driver on FreeBSD" In Proceedings of USENIX Annual Technical Conference (ATEC 99), 41-51, June 1999.
- K. Kobayashi, K. Mishima, S. Casner, C. Bormann: "RTP Payload Format for DV (IEC 61834) Video" RFC 6469, December 2011.
- K. Kobayashi, A. Ogawa, S. Casner, C. Bormann: "RTP Payload Format for 12-bit DAT Audio and 20- and 24-bit Linear Sampled Audio" RFC 3190, January 2002.
メンバー
| 役職 | 氏名 |
|---|---|
| ユニットリーダー | 小林 克志 |
| 特別研究員 | BAI Jiaqing |